2020年（令和2年）11月の全国繊維業者の倒産（負債額1000万円以上＝整理・内整理含む）は29件で、前月比で5件（20.8％）増加となったが、前年同月比では5件（14.7％）減と7ヶ月連続の減少となった。
　負債額は93億900万円で、前月比72億1100万円（343.7％）、前年同月比では23億8100万円（34.4％）増加した。
　負債額10億円超の大型倒産は、リデア㈱（実質本社：東京都港区、紳士服・洋品小売ほか、負債額46億1400万円）、㈱グランドスラム（実質本社：大阪市住之江区、子供服製造小売、負債額15億円）の2社、5億円以上は原田商事㈱（福岡市博多区、ベビー用品ほか製造、負債額6億円）の1社。負債額は5月以降前年比減少が続いていたが、前記大型倒産の発生で、増加に転じた。
　リデア㈱は、高級インポートの紳士服を中心に扱い、創業社長による積極的な店舗展開と海外進出などで急速に業容を拡大。しかし、今年1月前社長が急逝したことに加え、新型コロナウイルス感染拡大が経営不振を招き、事業拡大費用を借入に依存していたことで資金繰りも逼迫し、自主再建を断念した。
　㈱グランドスラムは、子供服SPAとして「グランドグラウンド」（通称「グラグラ」）ブランドの浸透で、ピークには年商約50億円を計上した。しかし、同業他社との競合や社内トラブルなどで急速に業況が悪化。コンサルタント会社が当社を買収し経営の立て直しを図ったが、支払遅延や従業員の給与未払いなどで信用不安が高まり、実質1店舗の営業まで規模を縮小し、動向が注目されていたところ、債権者から第三者破産を申請された。
　アメリカでは大統領交代、新型コロナウイルスのワクチン開発が進み、経済活動が再開されるとの期待感が高まり、24日にはダウ平均史上初の3万ドルを超えるなど株式市場が活発化。これを背景に国内株式市場でもバブル崩壊後の最高値を更新し、27日は2万6644円まで高騰した。しかし、中旬以降コロナウイルス感染の拡大が影響し、札幌・大阪市などが再度、飲食業者に対し営業時間の短縮を要請したこともあって、3連休後は外出自粛ムードとなり、消費マインドは冷え込み、実体経済との乖離も見られる。
　繊維業界では気温の低下で冬物衣料に動きが見られ、3密を避けるため、セール期間を長く設定するなどの対応を行い、売上確保に努めているが、EC媒体では堅調を維持しているものの店頭の苦戦は続いており、年末商戦を控え、楽観できる状況にはない。売上不足による資金繰りの悪化が懸念される中、早々にコロナ対策融資を導入して運転資金に充当した企業などは余力が乏しくなっていると見られ、徐々に倒産が増加することも考えられる。
　業種別では、「小売商」12件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」6件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」「その他」各4件、「染色整理・特殊加工」「織物製造」「寝具・インテリア」各1件。
　原因別では、「業績ジリ貧」が22件で75.9％を占め、「業況急変」4件、「貸倒れ損失」「資金力薄弱」「信用度薄弱」各1件。