負債30億円以上の大型倒産は8社で、前年同月比5社、前月比4社とそれぞれ増加したが、関西エリアでの発生はなかった。上場企業の倒産については2020年9月コンテンツ事業などを手がける㈱Nuts（東京、JASDAQ、破産）以後、発生は認められない。また、100億円以上の倒産は1月に会社更生法の適用を申請した大興製紙㈱（静岡県富士市、負債140億円）に次いで当月は3社発生した。
　負債額トップの㈱F‐Powerは、2009年（平成21年）4月の設立で、PPS（特定規模電気事業者）としてスタート。企業、工場、店舗経営業者向けを主体に高圧・特別高圧電力事業を行うほか官公庁、一般家庭の低圧電力にも参入し、2018年4月には契約電力400万㎾以上の新電力最大手に成長。グループ会社や各地の発電所などから電力を調達して事業規模を拡大、特色のある料金プランを提供して2019／6期には年収入高約1606億円を計上していた。しかし、同業他社との価格競合が激しく、2020／6期の年収入高は約722億円にまでダウン。さらに昨年末から年始にかけて続いた卸電力市場の価格高騰により、電力調達に係る費用が増加するなど資金繰りが多忙化。社会的な影響も大きいことから今回の会社更生法の措置により事業を継続しながら再建を目指すことになった。
　全国の企業倒産は637件で、前年同月の740件を下回った（14.3％減）。前月比では443件から194件の大幅増加となった（42.1％増）。負債額は約1414億円で、前年同月の約1059億円を大きく上回り（33.5％増）、前月比でも約674億円から倍以上の増加となった（109.6％増）。年度の倒産は30年振りに8000件割れとなったが、新型コロナ関連倒産は1150件を数え、3月も同関連倒産は月間では最多の151件を記録している。
　関西地区の企業倒産は165件で、前年同月の170件を小幅下回り（2.9％減）、前月比では103件から大幅増となった（63.4％増）。負債額は約155億円で前年同月の約241億から大幅減（35.6％減）。前月比では逆に約57億円から大幅増となっている（171.4％増）。関西地区での倒産件数は7カ月連続で前年同月を下回り、3月としては過去30年間で2番目の少なさとなった。負債額でも3月としては過去30年間では最小額となった。
　新型コロナウイルスに加えて、感染力の強い変異種の増加が不安を増幅しているうえ、ワクチンの普及も遅々として進まず、東京オリンピック開催も怪しい雲行きに。新年度入りも不透明感が強く、耐え続けている中小企業の多くは資金繰りも限界に近く、耐えられない企業の整理・淘汰が進む可能性もあれば引き続き動向に注目したい。
総合版大型倒産（負債30億円以上）
㈱F—Power（東　京、新電力、負債243億円、会社更生法申請）
㈱JCサービス（東　京、発電システム、負債153億円、民事再生法申請）
長田事業㈱（静　岡、不動産管理ほか、負債112億円、第三者破産申請）
㈱長泉ガーデン（静　岡、不動産管理ほか、負債75億円、第三者破産申請）
㈱じゅう（福　岡、元・不動産管理、負債57億円、破産手続開始）
㈱フェリーチェ（東　京、ホテル、負債36億円、破産手続開始）
㈱田中管財（石　川、古物商、負債35億円、特別清算開始）
㈱ビスタホテルマネジメント（東　京、ビジネスホテル、負債34億円、民事再生法申請）