2024年（令和6年）2月全国繊維業者の倒産（負債額1000万円以上＝整理・内整理含む）は28件で、前月比5件（21.7％）増、前年同月比では3件（12.0％）増となった。
　負債総額は42億4400万円で、前月比では4億300万円（8.7％）減、前年同月比は14億2600万円（25.1％）減となった。
　負債額10億円以上の倒産はスカラー㈱（大阪市浪速区、パンティストッキングほか製造、負債額10億円）1社、同5億円以上は㈱GRAZIA piu GA（東京都港区、婦人セーター類ほか製造、負債額6億円）1社。件数は増えたが、18件（64.3％）が負債額1億円以下の少額倒産だった。
　スカラー㈱は奈良地区靴下メーカーのストッキング部門が独立し、大手メーカーの指定工場としてスタート。ストッキング中心にタイツ、レギンスなども扱い、鹿児島県伊佐市にある自社工場でＯＥＭ生産を手がけ、ピーク時の1992／12期には年商77億円を計上していた。その後は取引先の海外生産へのシフトや需要の減退などから減収に歯止めがかからなくなり、2017／12期から赤字経営に転落。2021／12期以降はコロナの影響もあり、業況がさらに悪化していた。
　㈱GRAZIA piu GAは婦人セーター中心に一部紳士物を扱い、アパレルメーカー向けのＯＥＭ生産を手がけるほか、大阪市内にて直営店「バニティ」を運営し、2015／4期には年商17億596万円を計上していた。その後は減収基調となり、近年はコロナの影響も加わって年商6億円にまで落ち込み、2023年11月8日開催の株主総会の決議により解散し、特別清算を申請した。
　当月は日経平均株価がバブル期以来34年振りに最高値を更新し、円安を背景に業績好調の自動車関連、半導体関連、商社株などが買われ続伸した。また、春闘では主要自動車企業の多くが組合の要求に対し満額回答し、輸出関連、運輸・旅行など需要が回復している業種の中には過去最高のベースアップを要求する企業もある。
　一方で繊維業界は、2024年3月期連結決算が2期連続の最終赤字になる見通しの㈱ワコールホールディングスは希望退職者を募集、今後は不採算店の撤退を進めながら経営再編に取り組む方針とし、紳士服製造・小売の㈱コナカは、2023年5月期まで8期連続の赤字決算に陥っているかばん・袋物製造小売の㈱サマンサタバサジャパンリミテッドを完全子会社化する旨、発表した。これら上場企業にとどまらず、中堅企業でも合併や企業統合、事業譲渡、吸収・新設分割により設立する新会社で経営再編に乗り出している企業も少なくはない。
　繊維業者の多くはコロナ前の売上に戻らない中、円安・原油高による輸入・物流コストの上昇を販売価格に転嫁できないまま経過し、自助努力により収益の悪化を抑制することが精一杯の状況に置かれている。また、経営陣の高齢化や後継者問題、人員・人材不足など諸問題が山積している。現状では倒産件数が急激に増える気配は少ないが、更なる企業淘汰の局面を迎えている。
　業種別では「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」「小売商」各10件、「その他」4件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」2件、「織物製造」「寝具・インテリア」各1件。
　原因別では「業績ジリ貧」27件で96％を占め、「業況急変」1件。