2024年（令和6年）4月全国繊維業者の倒産（負債額1000万円以上＝整理・内整理含む）は24件で、前月比13件（35.1％）減、前年同月は同件数だった。
　負債総額は42億6600万円で、前月比では72億4300万円（62.9％）減、前年同月比は3億9200万円（8.4％）減となった。
負債額10億円以上の倒産は発生せず、同5億円以上は㈱サイキ（青森県弘前市、婦人服・洋品ほか卸、負債額9億7900万円）、㈱遠山（横浜市南区、スカーフ製造、負債額6億5000万円）の2件。その他は大半が小口案件で、21件（87.5％）は負債額3億円未満のため負債総額は低水準にとどまった。
　参考までに、繊維業界では冬物決済が本格化する3月以降は倒産件数が増加する傾向にあったが、2021年4月件数21件、負債額29億8100万円、2022年4月同13件（過去2番目の低水準）、同4億1400万円（実質、過去最少）とコロナ禍では低い水準で推移した。
　㈱サイキは古参の地方問屋で婦人・紳士服、インナー、作業服ほか扱品は多岐にわたり、1990年代は子供向けスポーツウエアの販路拡大が奏功し、ピーク時の1998／2期は年商69億4057万円を計上した。
　しかし、2001／2期には2億3500万円の大幅赤字に陥り、以降は減収・赤字決算が多発。2018年12月には子供向けスポーツウエアの取引がなくなったことで売上は急減、2019／2期には3億1093万円もの赤字を計上して債務超過に転落した。これにより対外信用は低下し、一部では前金での取引を強いられ、コロナ禍で更に経営環境が悪化、近時も業況は回復せず債務返済の見通しが立たなくなり、破たんに至った。
　㈱サイキのようにピーク時と比べ1/20まで年商規模が落ち込み事業を継続できていたのはレアケースではあるが、規模縮小と並行して、銀行借入金の相次ぐリスケや取引条件の変更などにより、辛うじて事業を継続している中小・零細業者は少なくない。
　また、円安の加速で生産拠点を海外にシフトしている業者の経営が圧迫され、国内でも原油の高値安定により燃料コストが高止まりし、電気・ガス価格激変緩和対策事業も5月末で終了するため、今後の生産現場における収益悪化が懸念される。価格転嫁による対応で売上・利益両方で効果を得ている企業は一部に限定されており、倒産多発の様相を呈している。
　業種別では「小売商」9件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」6件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」3件、「織物製造」「その他」各2件、「染色整理・特殊加工」「寝具・インテリア」各1件。
　原因別では「業績ジリ貧」22件で92％を占め、「業況急変」が2件。