2021年（令和3年）5月の全国繊維業者の倒産（負債額1000万円以上＝整理・内整理含む）は21件で、前月比同、前年同月比では1件（4.5％）減と、昨年5月から13カ月連続の減少となった。
　負債額は94億3700万円で前月比64億5600万円（216.6％）増、前年同月比では108億4500万円（53.5％）減少した。
　昨年5月は東証1部上場の㈱レナウンの負債138億7900万円が負債額全体を底上げして2013年9月以来の200億円超えだったが、当月は同月以降では最高額となった。
負債額10億円超の大型倒産は㈱コイケ（名古屋市中区、ニットウエアほか卸、負債額72億5400万円）1社、5億円以上も㈱サティス（大阪市西区、かばん・袋物小売、負債額6億円）1社のみだが、㈱コイケは昨年5月以降では㈱レナウンに次ぐ負債額だった。
　㈱コイケは紳士・婦人物セーターを主力にジャケット、シャツなど布帛製品を扱い、中国の協力工場で生産。名岐地区のアパレルメーカーを中心に広く販路を築き、ピーク時の2019/7期は売上高125億2073万円を計上。2018/7期には過去最高の当期純利益1億3628万円を計上するなど直近3期間は堅調に推移していた。
　しかし、コロナ禍による業況の悪化と販売先からの回収長期化で収支・資金繰りが急速に悪化し、5月14日以降に到来する債務弁済の見通しが立たなくなり、自力再建を断念した。
　㈱サティスは10～20歳代対象のレディスバッグを主体に帽子、財布、雑貨などを扱い、全国のショッピングセンター中心に店舗展開し、2017/2期には年商15億6000万円を計上していた。その後は不採算店を閉鎖したことなどから減収基調を辿り、赤字決算を散発するなど低調に推移。こうした中、新型コロナウイルス感染拡大で休業・時短営業を余儀なくされ、2021/2期は年商5億2800万円にまで落ち込む中、4月末からの再度の緊急事態宣言を受けて自力再建を断念した。
　繊維倒産は過去最少の17件が続いた後も、20件台の低水準で推移している。しかし、海外生産の依存度が高い繊維業界にあって、㈱コイケの破たんは輸入代行業者の厳しい資金事情を露呈した形となり、更に同社の取引関連先や同業者の破たんが相次ぐのではとの見方もある。加えて、政府主導で金融機関が積極的に行ってきたコロナ関連融資を含め、国内経済の不透明感から貸出姿勢が硬化しているとも伝えられ、先行きは楽観できる状況にはない。
　業種別では、「小売商」8件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」7件、「織物卸」「その他」各2件、「織物製造」「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」各1件。
　原因別では、「業績ジリ貧」が17件で81％を占め、「業況急変」3件、「資金力薄弱」1件。