2022年（令和4年）10月の全国繊維業者の倒産（負債額1000万円以上＝整理・内整理含む）は19件で、前月と同件数、前年同月比では2件（11.8％）増加した。
　負債額は27億4700万円で前月比10億3400万円（27.3％）減少したが、前年同月比では9億9100万円（56.4％）の増加となった。　
　負債額10億円超の大型倒産はミックコーポレーション㈱（実質本社：東京都中央区、婦人カジュアルウエア製造、負債額10億円）の1件、同5億円以上も奥特殊紡績㈱（大阪府泉佐野市、マット製造、負債額6億6000万円）の１件のみで、引き続き少額倒産が大半を占めた。
　ミックコーポレーション㈱はカジュアルウエア中心に扱い、大手アパレル・ＳＰＡのＯＤＭやＯＥＭを手掛け、中国の外注工場で生産し、ピーク時の2017／10期には年商32億9600万円を計上していた。しかし、従来から低収益が続き、近時、売上はやや持ち直していたものの、急速な円安進行と物流コスト高がさらに収益を圧迫し、資金繰りも限界となり破綻した。
　ウクライナ情勢は依然出口が見えない状況が続き、欧州を中心に世界経済の先行きの見通しが厳しい中、当月はコロナ禍での入国者数制限が撤廃され、外国人観光客の増加に伴うインバウンド需要への期待も高まり、全国旅行支援が開始されたことで、一部の産業では明るい兆しが見えつつある。
　しかし、10月20日円相場が一時1ドル150円台に上昇し、1990年8月以来、約32年ぶりの安値を付けた。その後、日銀の介入などでやや落ち着きを取り戻した感はあるが、コスト高による物価上昇が止まらず、家計を圧迫しており、年末商戦に向けても不安が残る。
　繊維業界の倒産では前述のミックコーポレーション㈱のような円安倒産は、これまであまり見られなかったが、輸入比率の高い当業界においては、今後増加する可能性がある。加えて、コロナ対策資金や各種補助金・助成金の縮小で資金繰りに影響を及ぼす企業も出てくると見られ、倒産多発へのリスクは高まりつつあるものと予想される。
　業種別では、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」7件、「織物製造」「ニット製品・洋品雑貨製造卸」「小売商」各3件、「染色整理・特殊加工」2件、「その他」1件。
　原因別では、「業績ジリ貧」が17件で89.5％を占め、「業況急変」「信用度薄弱」各1件。