2023年上半期（1～6月）の全国繊維業者の倒産（負債1000万円以上＝整理・内整理含む）は156件で、前年同期比45件（40.5％）増加した。負債額は387億8000万円で、前年同期比245億7800万円（173.1％）の大幅増となった。参考までに2021年と2022年の同期は2年連続で過去最低を更新していた。
　負債額50億円を超える大型倒産は発生せず、10億円以上はオーサム㈱（東京都渋谷区、日用品雑貨小売、負債額45億9200万円）、アッシュ・ペー・フランス㈱（東京都港区、服飾雑貨ほか小売、負債額29億円）、㈱理喜（大阪府箕面市、紳士肌着ほか製造、負債額15億1700万円）ほか全6件（前年1件）。
　オーサム㈱はアメリカンテイストのインテリア雑貨を中心に多岐にわたる商品構成で「ＡＷＥＳＯＭＥ ＳＴＯＲＥ」「ｏｆｆ＆ｏｎ」の店名で全国のショッピングモールや駅ビルに店舗展開し、ピーク時の2019/6期には年商55億200万円を計上していた。しかし、過去から仕入先との間でトラブルがあり、2022年には金融機関に対し借入金のリスケ要請を行うなど資金繰りがひっ迫。スポンサーを募ったものの、名乗りをあげる企業はなかった。
　アッシュ・ペー・フランス㈱はフランス中心にヨーロッパインポートブランドの服飾雑貨、婦人服などを主力に扱い、百貨店や路面店に展開して2013/2期は年商110億6324万円を計上した。しかし、不正会計などにより財務が悪化して、厳しい資金繰りを余儀なくされ、2017年に事業再生ＡＤＲを実施して金融機関から債権放棄を受け、2018年には投資組合をスポンサーとして再編に取り組んだものの、急激な円安進行により資金繰りが限界に達した。
　その他注目された倒産としては、2020年6月中小企業再生支援協議会に支援を要請して再建を目指したが、決算書と実際の財務状況に乖離が発覚して支援を打ち切られたフジライトカーペット㈱（東京都足立区、カーペット卸、負債額13億6500万円）。
　従業員による不正発覚や一部で粉飾決算説が囁かれていたホープインターナショナルワークス㈱（大阪市西区、衣料補修・検品、負債額9億5000万円）。丸松㈱（大阪市中央区、ニットウエア製造、負債額8億5400万円）は、明治期創業の老舗ニットウエアメーカーで、ピーク時には年商160億円の国内有数メーカーだったが、休眠状態の子会社への貸付金が回収困難となり経営再編できなかった。
　これらはいずれも、コロナ禍での経営環境の変化が直接的な倒産原因ではなく、以前から課題を抱えていた企業である。繊維業界ではコロナ融資や各種助成金の恩恵により経営を凌いできた企業の経営破たんは顕在化しておらず、それらの「代替融資」により倒産が再度「先延ばし」されているとも考えられ、下半期に向けて予断を許さない状況が続くと思われる。
　業種別では、「小売商」が61件で全体の39.1％を占め、次いで「紳士・婦人・子供・被服製造卸」33件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」21件と続き、この3業種で115件、全体の73.7％を占める。以下「インテリア製品製造卸」「その他」各10件、「染色整理・特殊加工」8件、「織物製造」「呉服・和装製品製造卸」各5件、「織物卸」3件。
　原因別では、「業績ジリ貧」が151件と大半（96.8％）を占め、以下「業況急変」4件、「資金力薄弱」1件。