2023年の全国繊維業者の倒産（負債1000万円以上＝整理・内整理含む）は328件発生し、前年比81件（32.8％）増となった。
　負債額は726億8300万円で前年比294億4000万円（68.1％）増となった。
　件数は2021年229件が過去最少、負債額は2021年、2022年と連続で過去最少を更新したが、件数、負債額とも大幅増となり、負債額はコロナ禍前の水準に近い金額となった（2019年は負債額50億円以上、同30億円以上各4件が、2020年は㈱レナウンの負債額138億7900万円が負債額全体を底上げしたもの）。
　負債額100億円以上の大型倒産は0件、同50億円以上も発生せず、2021年から3年連続となった。負債額が最も多かったのはオーサム㈱（東京都渋谷区、日用品雑貨小売、負債額45億9200万円）で、次いで㈱レイ・カズン（東京都渋谷区、婦人服製造小売、負債額31億円）、12月には東証スタンダード上場の㈱プロルート丸光（大阪市中央区、繊維総合卸、負債額27億300万円）が会社更生法を申請、上場企業の繊維倒産は2020年5月の㈱レナウン以来3年7か月振り、その他負債額10億円以上は12件。また、経営破たんではないが東証スタンダード上場の婦人服製造小売㈱ＡＮＡＰ（東京都港区）が、8月30日に事業再生ＡＤＲを申請していたことが10月に判明した。
　2023年の大型倒産をみると、明治初期創業の丸松㈱（大阪市中央区、丸編ニットウエア製造）、業歴70年のラモナー㈱（香川県綾歌郡、タイツ類ほか製造）、同50年以上の㈱理喜（大阪府箕面市、紳士肌着製造）などの老舗企業、ピーク時には100億円超の年商を計上していた道玄坂管理㈱（東京都渋谷区、婦人服製造小売、旧商号惠山㈱）、2023年3月新たな株主のファンド主導で再編に取り組んだ直後に破たんした㈱レイ・カズン（東京都渋谷区、婦人服製造小売）など業界でも著名な企業の倒産が相次いだ。
　繊維業界はこれまでに淘汰を繰り返し、企業数そのものが減少する中、規模縮小と合理化で債務を圧縮した結果、負債額100億円以上の倒産は2013年の㈱レモール（通信販売、負債額154億1500万円）以降、㈱レナウンのみとなっている。
　全体では負債額1億円未満の少額倒産が190件と58.9％を占め、上半期78件から下半期112件と大幅に増えている。
　倒産件数は2012年の480件以降2019年まで400件台、以降も減少傾向で推移していたが、2023年は増加に転じた。
　前述したとおり、大型倒産が発生する要因は少なくなったが、今後も後継者不在やジリ貧に陥った小規模業者の倒産が多発することが考えられる。
　業種別では「小売商」が137件で全体の41.8％を占め、コロナ禍前の平均値40％強に戻り、次いで「紳士・婦人・子供・被服製造卸」73件（22.3％）、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」34件（10.4％）、「その他」25件、「寝具・インテリア製品製造卸」15件、「染色整理・特殊加工」13件、「織物製造」12件、「呉服・和装製品製造卸」10件、「織物卸」7件、「糸及び原料商」「繊維総合卸」各1件。
　原因別では「業績ジリ貧」が307件と全体の93.6％を占め、次いで「業況急変」が13件、「資金力薄弱」7件、「貸し倒れ損失」1件。