2023年（令和5年）9月全国繊維業者の倒産（負債額1000万円以上＝整理・内整理含む）は32件で、前月比9件（39.1％）増加、前年同月比では13件（68.4％）の増加となり、9月としては2019年の29件以来の高水準となった。
　負債総額は67億7200万円で、前月比では33億6800万円（98.9％）増加、前年同月比では29億9100万円（79.1％）増加した。
　負債額10億円以上の倒産は㈱HYMO（名古屋市北区、芯地製造、負債額13億円）、㈱Ben&Mier（旧商号:立花屋、福岡市中央区、婦人カジュアルウエア小売、負債額13億円）、㈱G－TEX（大阪市中央区、婦人服製造、負債額11億9000万円）の3件。5億円以上は、金泉ニット㈱（愛知県岡崎市、婦人セーター類製造、負債額5億円）のみだった。　
　㈱HYMOは接着芯地を主体に毛芯地も扱い、アパレルなどに販路を形成し、ピーク時の1992/4期には年商62億4204万円を計上していた。しかし、取引先の海外生産シフトなどから減収基調に陥り2009/9期には15億2000万円にまで低下、赤字決算が連発。その後も業況は回復せず、2014/9期以降は欠損が常態化、2019年3月で事業を停止し、債務整理を進めていた。
　㈱G－TEXは、婦人服全般のOEM/ODMを手がけ、メーカー・商社に受注基盤を形成、傍系㈱マーキュリートレーディング（所在地同、婦人服縫製、負債額2億8000万円）経由などで国内や中国の工場で生産。近時は順調に売上を伸ばし2023/2期はピークとなる13億円超の売上を計上した。しかし、業歴浅く資金面が万全でない中、㈱マーキュリートレーディングが支払遅延して急速に取引が収縮し、両社ともに破たんに至った。直近決算と申立時の負債に乖離もあり、注目される倒産となった。
　国内市況は店頭の物価高に鈍化傾向が見られ、大手スーパーでは一部商品の値下げを断行、また、燃料価格の下落や政府の負担軽減策延長により、11月の電気料金は大手電力10社のうち8社が、ガス料金は大手4社すべてが値下げを発表するなど、消費者負担の軽減が期待される。さらに、インバウンドもコロナ前の80％程度まで回復しており、年末商戦に向けても好材料となっている。
　しかし、為替市場は9月27日149円71銭と今年の最安値を更新、日経平均株価も下落に転じており、不安材料を残している。
　繊維業界においては、夏物は堅調に推移したものの、残暑が長引いた影響で秋物の立ち上がりは鈍い。気象庁の寒候期予報によると、今冬の見通しは暖冬予想となっており、冬物商戦への影響も気にかかる。また、円安による海外仕入コストの高止まり、一部では対中関係の悪化に伴い、通関遅れによる納期の問題も発生している。
　倒産件数は今後も業績ジリ貧型を中心に前年比を上回る推移になるものと予想され、年間ベースでも当月末時点で237件となっており、2022年年間件数の247件を超えることは確実で、引き続き楽観視はできない状況と見られる。
　業種別では「小売商」16件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」8件、「その他」3件、「織物製造」「ニット製品・洋品雑貨製造卸」各2件、「織物卸」1件。
　原因別では「業績ジリ貧」28件で88％を占め、「資金力薄弱」「業況急変」各2件。