2024年（令和6年）9月全国繊維業者の倒産（負債額1000万円以上＝整理・内整理含む）は24件で、前月比9件（27.3％）減、前年同月比8件（25.0％）減少した。
負債総額は65億9400万円で、前月比は19億6300万円（42.4％）増、前年同月比は1億7800万円（2.6％）減となった。
　負債額10億円以上の大型倒産は㈱マ・メール（実質本社：大阪市住之江区、子供服小売、負債額24億円）、三誠㈱（東京都墨田区、婦人インナーほか製造、負債額10億円）、㈱ホープタウン（鳥取県米子市、スーパー・衣料品ほか小売、負債額10億円）の3社。同5億円以上10億円未満は発生せず、同2億円未満の小規模倒産が18件（75.0％）であったが、大型倒産3社が負債額を底上げした。
　㈱マ・メールはヨーロッパインポートブランドの子供服を扱い、2000年頃に卸から小売へ転換。大阪市内や東京都内など都心部の百貨店、ホテルに出店し、2007／7期は年商21億円を計上していた。その後は減収続きで赤字決算を頻発し、余裕のない資金繰りを強いられ、金融機関にリスケを要請して凌いでいたが、コロナ禍、円安、コスト高が重なり、自力再建を断念して民事再生法を申請した。今後は東証スタンダード上場エンターテイメント事業の㈱KeyHolder（東京都渋谷区）をスポンサーとして経営再編に取り組むこととなった。
　倒産時は不動産管理で倒産集計にはカウントされないが、かつては合繊ふとんわたメーカーとして著名であった浪華絹綿㈱（実質本社：大阪市都島区、負債額4億円）に当月、破産手続開始決定が下りた。紡績、商社、寝具メーカーほかに販路を築き、ピーク時の1981／3期には年商50億654万円を計上していた。しかし、需要低迷などで減収・赤字の経営となり、2017／3期で繊維事業から撤退して現業に転換。借入返済を進めていたが、社有不動産を売却したことで、返済原資が底をつき、法的手続での処理となった。
　繊維業界では、2000年代に入り売上規模が大幅に縮小したが、過去の設備投資などでピーク時の年商に匹敵する金額の銀行借入を抱えて経営を続けている企業も少なくない。前述の2社のように借入金のリスケ継続や資産売却により債務を圧縮しながら、更なる規模縮小で収益改善に取り組んでいた企業の倒産がコロナ5類移行後に見られるようになった。事業の立て直しができない息切れ企業の「清算型」破たんが、今後も多発する環境下にある。
　業種別では「小売商」12件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」「その他」各3件、「織物卸2」2件、「紡績・撚糸」「染色整理・特殊加工」「ニット製品・洋品雑貨製造卸」「寝具・インテリア製品製造卸」各1件。　
　原因別では「業績ジリ貧」18件で75％を占め、「業況急変」4件、「貸倒れ損失」「信用度薄弱」各1件。